歯磨きで口臭を撃退!歯科医が教える正しい歯磨き
仕事で疲れて帰ってきた日や飲み会で帰宅が遅くなった日に、つい歯磨きを忘れて寝てしまう、このようなシーンは忙しい日常生活においてよく見られる光景です。
ただ口臭のニオイの元は「寝ている間」につくられており、歯磨きをしないまま寝てしまうと翌日の口臭が強くなる要因となるため注意しましょう。
今回は口臭ケアの基本ともいえる「歯磨き」にスポットを当て、口臭対策に理想的な歯磨きの回数やタイミング、具体的な方法などを詳しくご紹介していきます。
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●この記事を書いた人●
ひぐち歯科クリニック 院長
歯科医 樋口均也
日本口臭学会 口臭指導医大阪府茨木市のひぐち歯科クリニック院長。大阪大学歯学博士。口臭治療のスペシャリストとして約30年間口腔診療に従事。テレビ・新聞・雑誌等多くのメディアに出演・解説・執筆の経験を持つ。日本口臭学会 口臭指導医・厚生労働省 臨床研修指導医・ドライマウス研究会認定医・日本中医学会中医学認定医・インタネット医科大学口腔内科教授。
執筆記事
・耳鼻咽喉科の情報専門誌「JOHNS」 執筆記事論文掲載
・保険同人社「暮らしと健康」親知らずの悩みについて解説
・かんさい情報ネットten.「チーズ人気のカラクリ チーズの虫歯予防効果についての検証」
歯磨きは口臭ケアの基本
口臭のおよそ9割は口の中にその問題が潜んでおり、予防には日頃の歯磨きが最も手軽で有効な手段となります。口臭対策で歯磨きをする目的としては、以下の3点が挙げられます。
まず1つ目は「口内にたまっている食べカスを取り除くこと」です。室内に生ゴミを放置しておくと部屋中に嫌なニオイが充満するように、口の中も食べカスをそのまま放置しておけば口臭の原因となります。歯磨きにはニオイの発生元となる食べカスを取り除き、口臭を抑える効果があります。
2つ目の目的は「口臭のニオイを作り出す口内の細菌を可能な限り減らしていくこと」です。先の生ゴミや食べカスから出るニオイも、もとは細菌がこれらの分解する過程で発せられる腐敗臭です。
また口内に生息する嫌気性菌という細菌は、唾液や血液などに含まれるアミノ酸を分解して「揮発性硫黄化合物(VSC)」というニオイの強いガスを作り出します。これらの細菌の住みかである「プラーク」は物理的な力を与えないと取り除けないため、歯磨きは口臭予防にも一定の効果が見込めます。
3つ目は「虫歯や歯周病による病的口臭の予防」です。口臭には、誰にでもある生理的口臭と、体内の病的な原因で生じる病的口臭の大きく2つのタイプがあります。
生理的口臭はニオイもさほど強くなく、自身でのコントロールが可能ですが、病的口臭は原因の病気を改善しないかぎり、他人を不快にする強い口臭を発し続けます。その病的口臭の多くは虫歯や歯周病などが発端となっており、歯磨きでこれらの病気を未然に防ぐことは病的口臭の予防にもつながります。
正しい歯ブラシの選び方
歯ブラシはまず、奥まで届きやすく小回りの利く小さなヘッドのものを選びます。また歯ブラシ全体が真っ直ぐになったストレートタイプのほうが、手と毛先の動きが一体となって磨きやすいでしょう。ブラシの毛はやわらかめ~ふつうの硬さで、先端が細いものほど細かいすき間まで毛先が届きやすくなります。
歯ブラシの交換は1ヶ月に1回を目安に、裏側からみて毛先がヘッドからはみ出るほど広がれば新しいものと交換します。もし2週間ほどで毛先が広がる場合は、ブラシを歯に当てる際の力が強すぎる可能性があるため、力加減に注意していきましょう。
歯磨きの効率をUPしたい方は、電動歯ブラシもおすすめです。電動歯ブラシはヘッド部分が自動で動くため、歯ブラシを動かさなくても歯が磨けるほか、磨く時間も手用の歯ブラシより短時間ですみます。
口臭対策に適切な歯磨きの回数とタイミング
就寝中は唾液の量が減少するため、一日の中で最も細菌が増殖しやすくなります。そのため朝は口のネバツキや口臭が発生やすすくなるので、起床後すぐに歯磨きをしましょう。
歯磨きは朝・昼・晩の毎食後3回を基本とし、近年はこれに「起床時」を加えた計4回が理想的な回数といわれています。しかし、口臭を気にするあまり一日に何度も時間をかけて歯磨きをすると、歯肉を傷つけかえって口臭を悪化させる恐れがあります。
最低限、起床直後と就寝前には歯を磨くように心がけてください。朝食後はうがいをするようにしましょう。中でも特に時間をかけたいのが就寝前の歯磨きです。冒頭で述べたように、寝ている間は細菌が繁殖しやすいため、歯磨きをしないまま寝てしまうと翌日の口臭を強くしてしまいます。
寝る前の歯磨きはより丁寧に、隅々までしっかり磨いていきましょう。
口臭に効く正しい歯磨きの仕方
口臭対策の歯磨きも、基本は虫歯・歯周病予防の歯磨きと同じです。歯磨き粉をつける場合は、ブラシの長さの1/2~2/3程度(約1cm)の量を目安にチューブから取り出します。
磨く順番は特に決まりはありませんが、①表側を磨いたら裏側 ②奥歯を磨いたら前歯 ③反対側の奥歯というように、ある程度決めておくと磨き残しが少なくなります。口臭対策では「歯と歯ぐきのきわ」「歯と歯の間」を重点的に磨いていきましょう。
ただしあまり力を入れすぎると、歯や歯ぐきを傷つけてしまうため注意が必要です。歯磨きの適切なブラッシング圧(ブラシにかける力)は100~200グラム程度といわれており、毛先が軽くしなるぐらいの力でも十分に磨けます。
また歯ブラシは力を入れて横にスライドさせるよりも、軽い力で細かく振動させるほうが、すき間の汚れが落としやすくなります。
最後に口全体に水を行き渡らせるようにゆすいだら、歯磨きは終了です。なお、フッ素配合の歯磨き剤を使用する場合は、ゆすぎは少なめ(1回)のほうがフッ素の効果が長持ちします。
オーラルケアグッズも活用しよう
歯ブラシ単独での歯磨きでは、歯に付着した汚れの6割程度しか落とすことができません。そこでさらに汚れの除去率を上げるために、歯磨きでは以下の清掃補助ツールも併用していきましょう。
◇デンタルフロス
口臭対策の歯磨きでぜひ使っていただきたいのがデンタルフロスです。強いニオイの元となるVSCを産出する細菌は、歯と歯の間などの狭いすき間を好んで生息しています。そこで一日に1回はデンタルフロスを使用し、すき間の汚れや細菌をかき出していきましょう。
デンタルフロスにはプラスチックの柄にフロスが装着された「ホルダータイプ」と、フロスを指に巻きつけて使用する「ロールタイプ」の2つのタイプがあります。どちらにもそれぞれに利点があるため、まずは自分が使いやすいものを選んでみてください。
またワックス付きのフロスは滑りがよく、歯間に入れやすいので初心者にはおすすめです。
使い方のコツとしては、フロスをゆっくり歯間に挿入した後、歯面に沿わせて上下に2~3回往復させることです。フロスを“入れて抜く”だけでは汚れは落ちないため、必ず歯面に沿わせて使用しましょう。
◇歯間ブラシ
歯と歯の間のすき間が開きはじめる中年以降は、歯間ブラシの併用がおすすめです。歯間ブラシもデンタルフロスと同様に、ブラシ部分を歯面に沿わせて汚れをかき出すようにして使っていきます。
ただし歯間ブラシはすき間の大きさによって適したサイズが異なるため、必ず自身のすき間に合うサイズのものを選ぶようにしてください。サイズの合わない歯間ブラシを使用すると、汚れ落ちが悪くなったり、歯や歯ぐきを傷めたりするおそれがあります。
もし自分に合うサイズがわからない場合は、歯科医院で一度サイズを測ってもらいましょう。
◇タフトブラシ
タフトブラシは細い柄にひとつの毛束がついたコンパクト歯ブラシです。歯ブラシが届きにくい奥歯のすき間や、歯並びがデコボコして磨きにくい部分に使用すると、汚れが落としやすくなります。
就寝前のデンタルリンスもおすすめ
寝ている間は唾液の分泌量が減るため、口内に細菌が繁殖しやすく口臭を強くしてしまいます。そこで就寝前の歯磨きでは、仕上げにデンタルリンス(洗口液)を使うのがおすすめです。
IPMP(イソプロピルメチルフェノール)やCPC(塩化セチルピリジニウム)になどの殺菌成分が配合されたデンタルリンスは、就寝中の細菌の繁殖を抑える効果が期待できます。このような成分を含むデンタルリンスを就寝前に使用すると、翌朝の口のネバツキや口臭が抑えられるでしょう。
なお液状タイプのオーラルケアグッズには、デンタルリンスのほかにも「液状歯磨き」があります。購入の際はパッケージをよく確認のうえ、「洗口液」と記載されてものを選ぶようにしましょう。
まとめ
正しい歯磨きは生理的口臭を抑えるだけでなく、虫歯や歯周病による病的口臭の予防にもつながります。口臭をはじめ、口にまつわるトラブルの予防の基本は毎日の歯磨きですので、本記事を参考に正しい歯磨きを習慣づけましょう。
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