幼児の口臭の原因と対策。小児歯科医が解説【口臭指導医】
口臭といえば大人のお口の症状のように思いますが、最近お子さんのお口の臭いが気になることを心配される親御さんも増えています。しかし、幼児の口臭は発生の原因や対処法が大人とは異なることをご存知ではない方も多い印象です。
そこで今回、幼児の口臭の原因やその対策方法などをご紹介します。とてもデリケートな問題なため、幼児を傷つけることがないように正しい知識で対応してあげましょう。
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●この記事を書いた人●
ひぐち歯科クリニック 院長
歯科医 樋口均也
日本口臭学会 口臭指導医大阪府茨木市のひぐち歯科クリニック院長。大阪大学歯学博士。口臭治療のスペシャリストとして約30年間口腔診療に従事。テレビ・新聞・雑誌等多くのメディアに出演・解説・執筆の経験を持つ。日本口臭学会 口臭指導医・厚生労働省 臨床研修指導医・ドライマウス研究会認定医・日本中医学会中医学認定医・インタネット医科大学口腔内科教授。
執筆記事
・耳鼻咽喉科の情報専門誌「JOHNS」 執筆記事論文掲載
・保険同人社「暮らしと健康」親知らずの悩みについて解説
・かんさい情報ネットten.「チーズ人気のカラクリ チーズの虫歯予防効果についての検証」
幼児の口臭の主な原因
幼児の口臭は自分で気になるということはなく、親御さんが気にされることが多い症状です。ほとんどが起床時に一時的に感じる「生理的口臭」で、うがいや歯磨きで解消されるものです。大人と違って病気や内臓からの臭いが原因ということは稀で、主に口腔内に原因があります。
主な原因は口内で増える細菌の出す臭い
口腔内には約800種類ともいわれる多くの常在菌が住みついており、その中には、口臭の原因となるガスを発生させるものがあります。しっかり歯みがきしていたとしても細菌をゼロにすることは難しく、1時間で16倍、5時間後には100万倍に増殖します。朝起きたら口臭がきつく感じるのは寝ている間に細菌が増殖しているためです。
臭いの原因は嫌気性菌
鼻を突くような臭いを起こしているのは、酸素が少ない状態で増殖する嫌気性菌が発するガスの臭いです。
嫌気性菌は特に、深い歯周ポケットの中や歯の根っこに病気ができた時に増殖し、活動が活発になります。ですから歯周病が悪化したり、神経が壊死して膿が溜まったりすると口臭はさらに強く感じるようになります。
増える幼児の「口呼吸」
本来、自然な呼吸は口を閉じて鼻でおこないます。しかし歯並びの悪さや口元の筋肉の発達が弱いことなどから口が開いてしまい、口呼吸が自然な呼吸になっているお子さんが増えています。日常的にお口が開いているため口臭を感じやすくなってしまいますし、口臭につながるさまざまな要素につながると考えられます。
口の中で口臭が発生する理由
ではここで、幼児の口臭が発生するメカニズムを原因ごとに詳しくご紹介します。「幼児の口臭が気になる」と感じたら、どの状況に当てはまるか確認してみることで対処法が変わります。
主な理由は以下の4つです。
・口呼吸による口腔内の渇き
・虫歯、歯肉炎、歯周病
・口腔内に溜まった汚れ
・副鼻腔炎または扁桃炎
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口呼吸による口腔内の渇き
口腔内は唾液で満たされていることで殺菌や浄化が行われますが、口が開いていると口腔内が渇いて唾液の持つ効能が発揮されにくくなります。鼻呼吸の人より細菌が繁殖しやすく、口臭の原因になってしまいます。
虫歯、歯肉炎、歯周病
唾液の働きが悪くなると常在菌が繁殖しやすく歯垢(プラーク)が付きやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。そして象牙質という歯の内側の層が虫歯で浸食され、口臭の原因となってしまいます。また、歯肉炎が進行したものが歯周病ですが、歯茎から出血や排膿するようになるほど悪化してしまうと、これらも口臭の原因になります。
口腔内に溜まった汚れ
口腔内が不衛生なままになっていると口臭の原因になります。先にご紹介した歯垢(プラーク)もそうですが、食後にうがいや歯磨きを怠っていると、歯の溝や歯と歯の間、歯と歯茎の境目、上あごあたりに食物残渣が溜まってしまうことがあり、その臭いが口臭となっていることもあるのです。
副鼻腔炎または扁桃炎
副鼻腔炎は、副鼻腔に鼻水や膿が溜まります。卵が腐ったような悪臭が息に混じり、口臭がきついと感じることがあります。また扁桃炎は、膿栓や膿汁が肥大した扁桃に溜まり、これもきつい口臭の原因になることがあります。
特に鼻が詰まっていると口呼吸になりやすくなり、口から鼻水や膿の臭いを余計感じやすくなることもあるでしょう。
幼児の口臭対策について
次に、口臭が発生する原因ごとにどのようにしたら改善されるのか、対策方法を4つご紹介します。
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お口を潤すために唾液の分泌を促しましょう
お口が渇くと細菌が繁殖して臭いの原因になることがほとんどですので、お口が潤っていれば口臭は感じにくくなります。寝ている間は唾液の分泌が減るため細菌が繁殖しやすく、朝起きた時に口臭を感じやすいのはそのためです。
口腔内が常に唾液で満たされるためには、まずはしっかりお口を閉じられるようになること。そして、水分をこまめにとることなどを心がけてみましょう。
歯科の定期検診を受けましょう
虫歯や歯肉炎、歯周病は初期段階で腫れや痛みを感じにくい傾向があります。幼児のうちは歯質が薄く神経が大きいため虫歯が進行しやすいですし、歯肉炎や歯周病の初期は症状に気づきにくいため、痛みや出血で気づいたときにはかなり進行しているケースもあります。
症状が悪化して手遅れにならないように早期発見・早期治療が大切なのです。そのためには歯科医院で定期検診を受けることをおすすめします。
食後は歯磨きやうがいを行いましょう
お口の中の不衛生が原因の口臭は、歯磨きやうがいで改善できます。しっかり食後に磨いているつもりでも、磨き癖や食生活などが影響して歯垢が残っていると臭いの原因になります。また、小さいお子さんは上あごのくぼみに食物残渣が溜まったままになっていることもあります。食後はしっかり水分補給またはうがいを行うようにしましょう。
お口周辺の筋機能を向上させましょう
耳鼻科で副鼻腔炎や扁桃炎の治療を受けることはもちろんですが、口呼吸の根本的な原因が改善されなければ、副鼻腔炎や扁桃炎を繰り返すことがあります。耳鼻科の治療と並行してお口周辺の筋機能を育てましょう。筋機能トレーニングを行っている歯科医院もありますので、気になる方は相談してみてください。
よくある疑問について
幼児の口臭に関して、よくある質問4つに関して小児歯科の観点からお答えします。診察を受ける目安など、ぜひ参考にしてください。
幼児の口臭改善に一番効果がある方法は?
本来自然な呼吸は、口を閉じて鼻でおこないます。しかし最近では、歯並びの悪さや口元の筋肉の発達が弱いことなどから、口が開いてしまい、口呼吸が自然な呼吸になっているお子さんが増えています。口呼吸はほとんどの原因に関係していますので、まずは口呼吸を鼻呼吸に改善することが大切です。
幼児の口臭で受診する目安(基準)は?
先にご紹介したように、寝起きで感じる口臭は一時的なものです。お口が潤うと気にならなくなるはずですので、起床後のうがいや歯磨きで改善されれば受診する必要はありません。
日常的に口臭が気になるようでしたら、虫歯や歯周病といった歯に関わる病気か、副鼻腔炎や扁桃炎といった他の病気の可能性もありますので受診されることをおすすめします。
幼児の口臭治療は何科?健康保険は?
口臭の治療は歯科で行えます。歯科医院によっては口臭のレベルを測る器械を用いることもあります。お子様の場合、内臓的な病気が原因という可能性は低いので、歯科医院で虫歯や歯周病治療を行うことが口臭治療になるでしょう。
もしも副鼻腔炎や扁桃炎が原因であれば耳鼻科治療も並行必要になる場合もあります。
口臭治療が主目的であっても、虫歯治療や歯周病治療、耳鼻科の治療であれば健康保険で対応できます。ただ、口臭測定検査を受ける場合には自費で行っている医院もありますので、事前に確認して受けるようにしましょう。
幼児に市販の口臭対策グッズは使っても大丈夫?
基本的に幼児は口臭対策のマウスウォッシュやブレスケア用タブレットは必要ありません。特に大人用のマウスウォッシュやブレスケア用品などは成分の刺激が強いものもありますので使用は控えましょう。
もしもフッ素や細菌の増殖を抑制する成分が入った幼児用の洗口液などを使う場合には、しっかり歯磨きで汚れを落とした後に使用するのがおすすめです。
デンタルフロスを併用するのもおすすめです。歯ブラシだけでは落しきれない歯と歯の間の歯垢汚れを落としてくれますので、口臭予防だけでなく虫歯や歯周病予防にもつながります。
親と幼児の口臭は関係している?
口臭そのものは親子で遺伝することはありませんが、親子間の関連性は考えられます。日常的なスキンシップや食事を与えるスプーンを介して親の持つ口腔内常在菌に感染するため、親御さんが虫歯や歯周病菌をたくさん持っていれば、お子さんも受け継ぎやすいということです。
また、親御さんが虫歯になりやすい食事を好めば、おのずとお子さんも虫歯のリスクが高くなる可能性があります。
前述したように、幼児の口臭は虫歯や歯周病から起因することが多いため、虫歯や歯周病になりやすいお子さんはその症状として口臭を感じるということにつながることもあるでしょう。
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