学名 | γ-アミノ酪酸 |
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和名 | ギャバ |
英名 | Gamma-Amino Buryric Acid |
GABAとはgamma-aminobutylic acidの頭文字をとったもので、正式名称は「γ(ガンマ)-アミノ酪酸」といいます。タンパク質を構成しない非タンパク性アミノ酸の一種であり、1949年に初めてジャカイモから発見されました。翌年の1950年には脊椎動物の脳からも発見され、1956年ごろからGABAの神経系に対する作用が明らかになり始めました。
GABAは動物、植物を問わずほぼ全ての生物が保有しており、発芽玄米や発酵食品、トマトなどの野菜に多く含まれます。人間をはじめとする哺乳類には、脳と脊髄からなる中枢神経に多く存在するといわれています。
GABAは、ストレスを感じた時に放出される神経伝達物質であるノルアドレナリンの分泌を抑制する働きを持つ、抑制性の神経伝達物質です。
精神を安定させ、ストレスや血圧、睡眠に関与するGABAの機能性を評価した論文は数多く、健康維持において重要な成分と位置付けられています。近年では、食品素材としての応用化が進んでおり、科学的根拠に基づいて食品の機能性を表示することができる「機能性表示食品」としてGABA配合のチョコレートやサプリメントが多く開発されています。
ヒトの皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層から成り立っています。
真皮は肌弾力に欠かせない成分であるコラーゲン、エラスチン(弾性線維)、ヒアルロン酸などから成り、網状に形成されているコラーゲンやエラスチンの間を埋めるように、保湿成分であるヒアルロン酸が存在します。
このコラーゲンやヒアルロン酸を生成しているのが真皮にある線維芽細胞であり、肌機能を保つ上で線維芽細胞の数を増やし、働きを活性化させることは大変重要なことです。
ヒトの真皮線維芽細胞に大麦乳酸発酵液GABAを結合させた実験では、皮膚のコラーゲンの90%を占め、弾力を生み出すI型コラーゲン遺伝子(I型α1鎖)が増加し、I型コラーゲン遺伝子を分解するMMP-1は抑制されました。※1
さらに、エラスチンの前駆体であるトロポエラスチン遺伝子の顕著な増加も確認することができ、GABAが線維芽細胞に働きかけ、肌弾力を生み出すことが明らかになりました。※2
ストレスによる肌荒れを感じている女性が、8週間 GABAを摂取した別の検証では、乾燥しやすい時期である秋から開始したため、皮膚状態の指標のひとつ水分量についてはGABA摂取群と偽薬摂取群の両群ともに摂取開始後は悪化傾向にありましたが、GABA摂取群は偽薬摂取群と比較して肌の粘弾性が高値であったことから、季節の変化による肌の弾力性の悪化を抑制することが分かりました。※3
参考※1
参考※2
参考※3
ストレスの度合いは、脳の活動を電気信号によって表す「脳波」を用いて測ることができます。
脳波とは、外部から得た全ての情報が、脳内に存在する神経細胞(ニューロン)を通って伝わった時に発生する電気信号です。
意識障害の程度を調べるためには脳波が重要であり、心身ともにリラックス状態である時にはα波、緊張してストレスを感じている時にはβ波が出現します。
ギャバ摂取とリラックスの関係について、α波とβ波の出現率をギャバ摂取群と水摂取群で比較した結果、ギャバ摂取群は水摂取群よりも高いα波の出現が確認できました。※4
また、リラックスした状態において優位になる副交感神経の活動がGABA摂取後に上昇したことが、GABAと偽薬を用いたヒト臨床試験で明らかになりました。※5
参考※4
参考※5
GABAには、血管収縮作用のある神経伝達物質「ノルアドレナリン」の分泌を抑えることで、血管を弛緩して血圧の上昇を抑制する働きがあります。
正常範囲であるものの将来的に高血圧になりやすいとされる正常高値血圧者108名を対象に、GABA摂取群と偽薬摂取群の2グループに分けた試験を実施した結果、GABA摂取群において収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)がともに有意な低下を示しました。※6
一方、正常血圧者に行ったGABA摂取試験では、GABAの摂取による血圧の変化は見られませんでした。 このような結果から、GABAの摂取は血圧が高いほど著しい降圧が得られ、逆に、正常に近い場合は影響しないことが分かっています。
さらに、GABAは腎臓の機能を高め、高血圧の一因である塩分の排出を促すことも確認されています。
参考※6
睡眠の問題やストレス、疲労を感じている成人勤労者がGABAを12週間連続で摂取し、主観的評価であるPMOS2とPSQI-Jを用いた検証では、活気-活力のスコア上昇を確認、一方で偽薬摂取群での変化は見られませんでした。
これにより、GABAの摂取による活気、活力感の向上作用が明らかになりました。※7
参考※7
日常生活における心身の疲労は睡眠の質の低下を招くため、GABAが持つストレス軽減作用は睡眠改善に役立つと考えられています。
睡眠に問題を抱えている成人勤労者25名が偽薬とGABAをそれぞれ2週間連続摂取した検証では、偽薬摂取期間と比較してGABA摂取期間においては深い睡眠を表すノンレム睡眠の時間が有意に長くなり、日常的なストレスや疲労を感じている人のGABA摂取による睡眠の質の向上が示唆されました。
認知機能の衰えを感じる40歳以上の健常者を対象に、GABA摂取群(100mg摂取群と200mg摂取群)と偽薬摂取群の3グループに分けた3ヶ月間にわたる臨床試験を実施。
Cognitrax(1)およびRBANS(2)と呼ばれる認知機能検査テストを行った結果、100 mg摂取グループで記憶力(3)・空間認知力(4)が改善し、200mg摂取グループでは記憶力・空間認知力に加えて、論理的思考(5)・作業記憶力(6)・持続的注意力(7)にも改善が見られました。
これにより、GABAの認知機能を維持・改善する機能が確認されました。
(1)パソコンを使用した脳の高次機能測定検査。
(2) 全米で標準化された神経心理学検査のひとつで、即時記憶、遅延記憶、視空間・構成、言語および注意の各認知領域を評価することができる簡便でかつ詳細なスクリーニング検査。
(3) 見たり聞いたりしたことを思い出す力。
(4) 物の位置、形、向きなどを把握する力。
(5) 筋道を立てて物事を考え、答えを導き出す力。
(6) 作業に必要な情報を整理し、短期的に記憶する力。ワーキングメモリー。
(7) 注意を持続させて、一つの行動を続ける力。
経口摂取したGABAが生体調節機能を発揮するメカニズムは未だ解明されていません。しかしながら、GABAのもつ機能性は人での試験で実証されたものであり、現在数多くのGABA含有商品が販売されています。
さらに、近年の研究では血中のコレステロールや中性脂肪をコントロールして脂質代謝を促す働きを持つことも分かっており、糖尿病や肥満の予防への実用化も期待されています。
さまざまな優れた機能を持つGABAは注目を集め、現在も、多角的な研究が進められています。
題名 | 掲載 | 発行日 |
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γ-アミノ酪産(GABA)含 有はっ酵乳製品の健常成人に対する影響 | 日本食品化学学会誌 | 2002 |
GABA含有はっ酵乳製品の正常高値および軽症高血圧に対する長期摂取時の有効性と安全性 | 健康・栄養食品研究 | 2003 |
GABA含有はっ酵乳製品の正常高値血圧者に対する降圧効果 | 日本食品科学工学会誌 | 2004 |
GABA経口摂取による自律神経活動の活性化 | 日本栄養・食糧学会誌 | 2008 |
ギ ャバ米 の有効利用に関する研究 | 美味技術研究会誌 | 2008 |
GABA promotes elastin synthesis and elastin fiber formation in normal human dermal fibroblasts | Biosci Biotechnol Biochem | 2017 |
健常成人におけるGABA 経口摂取が睡眠に与える影響―無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験― | 薬理と治療 | 2018 |
Intake of 200 mg/day of γ—Aminobutyric Acid(GABA)Improves a Wide Range of Cognitive Functions ―A Randomized, Double—blind, Placebo—controlled Parallel—group Clinical Trial― | 薬理と治療 | 2020 |
先述の通り、人間はGABAを体内で作り出していますが、体内で産生できるGABAの量には個人差があり、特に身体・精神状態が産生量に影響を与えるといわれています。特に、GABAは睡眠時に脳内で産生されるため、睡眠時間が短かったり睡眠の質が低下したりしている場合は、産生量が減少してしまいGABA不足に陥る傾向があります。
さらに、疲労や強いストレスを感じると体内のGABAは大量に消費されてしまうので、意識的に補う必要があるといえます。
現在は、GABA含有チョコレートなどの菓子や飲料が市販されており、手軽に摂ることができるようになりましたが、菓子に含まれる糖質やカロリー過多が懸念されることから、必要量を効率よく摂取するためには、サプリメントの活用が望ましいです。
GABA配合量は菓子やサプリメントによって大きく異なります。さまざまな商品を比較したり、口コミを参考にしたりしながら、自分の悩みに合った機能性表示食品を選びましょう。
また、GABAには血圧を下げる効果があるため、降圧薬を服用している場合は、薬との飲み合わせについて必ず医師に確認しましょう。精神的な疲労をGABAの摂取だけで解決しようとせず、生活習慣や食事のバランスを見直すことも大切です。
※2022年1月現在調べ
ヤクルトのおつとめGABA(ヤクルトヘルスフーズ)
【内容量】15袋
【一日目安量】1袋
ギャバ(DHC)
【内容量】30粒
【一日目安量】1粒
ストレスケア(FANCL)
【内容量】30粒
【一日目安量】1粒
GABA(オーガランド)
【内容量】30粒
【一日目安量】1粒
GABA(明治薬品)
【内容量】60粒
【一日目安量】2粒
GABA(ナウフーズ)
【内容量】100粒
【一日目安量】1粒
せらぴ(ナツプラ)
【内容量】60粒
【一日目安量】3粒
リフレッシュサプリGABA+Ca(オーガランド)
【内容量】90粒
【一日目安量】3粒
GABA(インシップ)
【内容量】30粒
【一日目安量】1粒
ネルライフ
【内容量】60粒
【一日目安量】2粒
GABA(ソースナチュラルズ)
【内容量】90粒
【一日目安量】1粒
GABA(いちたす)
【内容量】30粒
【一日目安量】1粒
1)GABA(γ-アミノ酪酸),ヤクルト中央研究所,2021年閲覧
2)田中啓司,GABA支配の神経シナップス,日本農業学会誌,1985年
3)GABA(ギャバ)の機能性について,とまとdeハイギャバ,2021年
4)GABA(ギャバ),わかさの秘密,2021年
5)篠崎温彦,比較生物学的にみた神経伝達物質,科学と生物,1979年
6) γアミノ酸(GABA、ギャバ),日経バイオテク,2020年
7) GABAの生産技術の確立と高機能食品の市場開発ユニークな機能性食品素材“GABA”はどのようにして生まれたか?,科学と生物,2019年
8)肌エイジングのメカニズム,アロエステロール研究所,2021年閲覧
9)肌のハリと弾力のヒミツ,Obagi,2021年閲覧
10)大麦乳酸発酵液ギャバ,三和酒類株式会社,2021年閲覧
11)コラーゲン,みつばち健康科学研究所,2021年閲覧
12) キャビアコラーゲン抽出物(エキス)がコラーゲンとヒアルロン酸の合成を促進!コラーゲンを分解する酵素を抑制する働きも!,株式会社協和,2020年
13) 輪千浩史,エラスチン遺伝子のオルタネイティブスプライシングと弾性線維形成 : 動脈瘤に対する遺伝子治療の基礎研究,星薬科大学紀要,2001年
14)脳波とは何か?,mACNICA,2021年
15)脳波,中外医学社,2021年
16)浅川伸一,神経細胞,1999
17)【α波(アルファ波)】科学的観点から見る音楽の力,Healing Plaza,2021年閲覧
18)交感神経と副交感神経の役割,日本セラピーグループ,2021年閲覧
19)血圧とストレスに深く関係するGABA(ギャバ)とは?,DMJえがお生活,2021年閲覧
20) GABA(ギャバ)を含有。発芽玄米のうれしい効果とは?,FANCL,2021年閲覧
21)GABAってなぁに?,ナチュラルクリニック代々木,2021年
22)GABAサプリおすすめ17選【DHCやファンケルなど厳選】飲むタイミングや注意点も,マイナビおすすめナビ,2021年