国産天然はちみつの魅力を満喫!
- ■Café Bee & ミルクハウス
『西岡養蜂園』は、日々の暮らしに国産の天然はちみつを取り入れてほしいと2018年にはちみつ専門店『Café Bee』をオープンしました。店内でははちみつや加工品を販売するほか、はちみつを使ったカフェメニューを提供。2019年にははちみつソフトクリームを製造販売する『ミルクハウス』を併設し、はちみつの魅力を満喫できるスポットとなっています。
ピラミッドの壁画にも採蜜の様子が描かれるなど、太古から人間と深く関わっているはちみつ。しかし、日本産のはちみつは、ミツバチの減少に伴って生産量が年々減少しています。そんな中、「晩白柚(ばんぺいゆ)」や「野ばら」など、全国でも珍しい国産単花蜜(一種類の花から集めたはちみつ)を生産する養蜂園があります。熊本県八代市の『西岡養蜂園』代表取締役の西岡千年さんを訪ねて、養蜂やはちみつの魅力についてお話を伺いました。
口の中に広がるコクのあるやわらかな甘みと、舌の上に感じるほのかな酸味。後味はさらりとしていて、爽やかな香りが鼻に抜けます。『西岡養蜂園』の代表的な単花蜜「晩白柚」は、目を瞑ってうっとりと堪能したくなる味わいです。
西岡千年さんは、い草農家に生まれ、地元の農業高校に進学。卒業後、養蜂業に可能性を感じて、18歳で福岡県朝倉市の養蜂家に弟子入りしました。西岡さんは当時を振り返って「弟子入りした初日、ミツバチに身体中を刺されました」と苦笑い。一般的にはミツバチが苦手になってしまいそうな出来事ですが、西岡さんは研修が終わる頃にはミツバチの世界にのめり込んでいました。「周囲に先輩たちもいたのに刺されたのは自分だけ。知らず知らずのうちに、ミツバチが嫌がることをしてたんですね。それから、ミツバチの生態を調べ始めました」。ミツバチは理由もなく人を刺したりしないこと、はちみつは紀元前から人の手で採取されていたこと、花ごとに採取できるはちみつに個性があること…。ミツバチという生き物の奥深さにすっかり夢中になり、養蜂業に就く決心をしたと話します。
独立後は、自家用に養蜂をしていた祖父から譲り受けた10箱の巣箱で養蜂をスタート。家業のい草栽培を続けるかたわら養蜂でも試行錯誤を繰り返し、巣箱を1500箱まで増やします。そして、独立から10年を機に、い草農家をやめて養蜂に専念。現在は自社のミツバチから採取したはちみつを販売するほか、農作物の交配用として全国の農家にミツバチやマルハナバチを出荷するなど事業を広げ、全国有数の大規模養蜂園へと成長しました。
『西岡養蜂園』では地元・八代を拠点として、ミツバチとともに国内を移動しながらはちみつを採取しています。ミツバチの体温は人間と同じくらいで、外気温が低くなる冬には動きが鈍くなり、暑さが続くとバテてしまいます。そのため、冬は温暖な奄美大島で体を休ませて、春になったら八代や天草、人吉で採蜜を始めます。そして夏には青森、北海道と移動してその土地土地の花の蜜を採取します。まさに〝旅するはちみつ〟です。ただし、移動先でも花の開花状況と気温、気候、ミツバチの体調がそろわなければ採蜜はできません。西岡さんは「はちみつは自然環境に大きく影響される食べものです。自然と対話し、共存することで、初めて採蜜が可能になるのです」と教えてくれます。
ミツバチは巣から半径2~3㎞圏内にある花の蜜を集め、体内で分解して糖に変えて、巣穴にためます。巣の中ではミツバチたちが羽で風を起こし、巣穴の蜜の水分を蒸発させて糖度を上げて熟成させます。持ち帰ったときに糖度10度前後だった蜜は、80度にまで上がります。『西岡養蜂園』では蜜がたっぷりと溜まった巣の蜜蓋(蜜蝋でできた巣穴の蓋)を包丁で薄くそぎ取って遠心分離機で絞り、ろ過をして瓶詰めに。加熱処理をしていないので、はちみつ本来の風味を楽しめ、栄養素や酵素を失うことなく〝生きた〟状態で摂取することができます。
『西岡養蜂園』では西岡さんをはじめ、ご家族やスタッフも、ミツバチの世話や採蜜をする時に防護服や手袋を身につけません。ミツバチがブンブンと飛び回る巣箱を素手で触る西岡さんを恐々と眺めていると「うちのミツバチは気性が穏やかなんですよ」とにっこり。加えて「日頃から素手で触っていると、ミツバチも人間が敵ではないと理解するため攻撃しません」とも。そう語る西岡さんの姿は、まるで子どもを見守るお父さんのようです。愛情深く育てられたミツバチが、日本を南から北へと旅して集めた貴重なはちみつ。西岡さんに、家庭での楽しみ方も教えてもらいました。
『西岡養蜂園』は、日々の暮らしに国産の天然はちみつを取り入れてほしいと2018年にはちみつ専門店『Café Bee』をオープンしました。店内でははちみつや加工品を販売するほか、はちみつを使ったカフェメニューを提供。2019年にははちみつソフトクリームを製造販売する『ミルクハウス』を併設し、はちみつの魅力を満喫できるスポットとなっています。
とろ~り甘い「はちみつ」は、自然界からの素敵な贈り物。
古来から、関連文献が世界中に残されているほど、栄養豊富な食材としても親しまれています。
今回は、ひとさじで幸せいっぱいになる「はちみつ」の奥深さを紐解きます。
季節の変わり目は、気温の変化に体がついていかなかったり、仕事のプレッシャーや人間関係の悩み事などのストレスを感じやすくなったり、自律神経が乱れる原因が増える時季です。自立神経が乱れると、やる気が出ない、食欲が無くなる、寝つきが悪くなる、眠りが浅く次の日に疲れが残る、といった症状が現れることも…。
そんな時こそ「はちみつ」の力でリラックス。はちみつには、精神を安定させ、幸福感を感じストレスを緩和してくれるセロトニン(通称:幸せホルモン)やドーパミンなど、神経伝達物質を分泌させるために必要なトリプトファン(アミノ酸)が豊富に含まれています。そのため、夜寝る前にはちみつを舐めるだけでもリラックス効果を高め、睡眠不足の解消や質の良い睡眠をとることができて、オススメです。
また、ご飯やパン、砂糖といった糖質は、ビタミンB1や消化器などから出る様々な酵素を使って、ブドウ糖と果糖に分解されます。その後、消化吸収されエネルギーとなりますが、はちみつの主成分はブドウ糖と果糖です。ミツバチが既に花蜜を分解し、それ以上消化する必要のない成分のため、体に素早く吸収されるのが良いところ。脳のエネルギー源となるブドウ糖が効率よく届くため、目覚めてすぐにはちみつを舐めると、スッキリとした寝覚めの効果も期待できます。
はちみつは、お肌に使用することで美容面にも効果を発揮します。シワやたるみ、くすみなどの肌の老化をもたらす最大の原因は乾燥です。はちみつの8割は糖分で、そのほとんどがブドウ糖と果糖ですが、これらの糖分はそのまま細胞や血液に吸収されるという優れた浸透性があります。
また、高い保湿性もあるため、水分の蒸発を防ぐ保護膜の役目も果たしてくれます。美容の大敵「乾燥」や「紫外線」からお肌を守り、潤いのあるしっとりとしたお肌へと導いてくれるのです。他にも、はちみつに含まれるグルコースオキシターゼは、水が加わるとグルコース(ブドウ糖)を分解して過酸化水素を形成するため、お肌の殺菌や美白効果にも一役買ってくれます。
はちみつに含まれる少量のオリゴ糖は、腸内の善玉菌の餌になり、ビフィズス菌を増やす効果があります。はちみつに含まれるグルコン酸という有機酸にも同様の効果があるため、はちみつを摂ることで腸内の働きが整い、便秘や下痢が抑えられるとされています。特に、腸内の善玉菌を増やす効果のあるヨーグルトと一緒に摂るのがオススメです。※ただし、摂り過ぎにはご注意を。
はちみつは、実に奥深い食品です。様々な活用法で毎日の生活にぜひ取り入れてみてください。
はちみつで自身の耳のアトピー性皮膚炎を解消。はちみつを使用した体に優しい料理や、はちみつを化
粧品代わりとして簡単に日常に取り入れる方法を広めている。
著書『毎日がしあわせになる はちみつ生活』(主婦の友社)他多数
はちみつは花ごとに味や香り、色に個性があり、食材との相性もさまざま。
それぞれの特長を知って、日々の食卓に上手に取り入れましょう。
はちみつは大きく2種類に分けられます。複数の花の蜜を集めた「百花(ひゃっか)蜜」と、一種類の花から蜜を採った「単花蜜」です。晩白柚、野ばら、さくら、かき、不知火、菩提樹…。『西岡養蜂園』では西岡さんがテイスティングを行なって、単一の花の特長が際立つ純度の高い蜜だけを単花蜜として販売しています。 琥珀色や黄金色、黒檀色と、ニュアンスが異なる19種類の単花蜜の瓶詰めが並ぶ様には神秘性すら感じます。「単花蜜は花ごとに色、香り、味、栄養価などさまざまな違いがあります。
その豊かな個性を生かして楽しんでいただきたい」と西岡さん。例えば、北海道で採取した「そば」の花の蜜は鉄分が豊富で、黒蜜のような深い黒檀色。バニラアイスやフルーツにかけてバルサミコ酢のように使うと、独特の風味が引き立ちます。黄金色の「不知火(※)」の花の蜜は熊本のブランドフルーツ・デコポンの産地で採蜜しており、強い柑橘の香りが特徴です。デコポンの果肉をマリネして、ヨーグルトの贅沢なトッピングに。「くり」は琥珀色で、独特の渋みを感じます。香りにクセがありますが、チーズとの相性が抜群! ホットワインに混ぜるのもおすすめです。
また、西岡さんの家庭では料理に甘みを加える際に砂糖ではなく蜂蜜を使い、スキンケアにも取り入れているそう。そのアイデアもご紹介しましょう。
※不知火=デコポンの品種名。糖度や酸度などで一定条件をクリアした不知火だけが「デコポン」の名称で販売される
はちみつを食べることによって免疫力アップや殺菌作用が期待できるというのは有名な話。少量を数カ月摂取し続けることで、体調や肌質に変化を感じる方もいるそうです。西岡さんの家庭では舐めたり、料理に用いたりして口から摂取するだけでなく、スキンケアにもはちみつを使っています。例えば、かさついた唇に薄く塗り広げて、リップクリーム代わりに。洗顔後の肌や、シャンプー後の髪に塗り込んだ状態で入浴すると、保湿されてツヤツヤになるとか。お風呂にはちみつをひと瓶スタンバイさせておくと、リッチなバスタイムを楽しめそうです。はちみつ専門店『Café Bee』には、自家製化粧品の材料にするためにはちみつを求めるお客様もいらっしゃるとのことで、はちみつの可能性から目が離せません。
※肌に合わない場合もあります。使い始めは少量試してからご使用ください。