佐賀県武雄市は、自然と歴史にはぐくまれた温泉郷。竜宮城のような武雄温泉の楼門がシンボルとして知られています。
そんな武雄の観光スポットの一つが、国指定の名勝地「御船山楽園」。1845年に武雄領主・鍋島茂義によって造られた池泉回遊式庭園です。ツツジと紅葉の名所ですが、近年はチームラボの展覧会を毎年夏に開催しており注目を浴びるようになりました。
5回目を迎える今年の「チームラボ かみさまがすまう森」は、過去最大級の巨大な展覧会。神々しい御船山の断崖を借景とする50万㎡のキャンバスに、チームラボが行う「Digitized Nature」というアートプロジェクトが融合。デジタルテクノロジーによって「自然が自然のままアートになる」というテーマのもと、新作を含む21作品が展示されています。
※2019年の展示は11月4日で終了しました。
訪れたのは8月下旬、緑が生い茂る庭園が昼と夜で驚きの表情を見せてくれました。
これまで夜だけでしたが、今年は新たに昼から鑑賞できる展覧会「チームラボ かみさまがすまう森の廃墟と遺跡 - THE NATURE OF TIME」(グランドセイコー協賛)が始まりました。日没までの時間、御船山楽園の廃墟や遺跡を回遊しながら4作品を展示しています。
見どころは、世界初公開の新作『廃墟の湯屋にあるメガリス』。使われなくなって廃墟と化した湯屋に、巨大な立方体の、異なる時空の塊(メガリス)が群立。この廃墟の湯屋にあるメガリスには、作品「花と人」、「憑依する滝群」が存在し、刻々と変化していく…。
チームラボの作品は、人が介在して変化していくアート作品が多く、メガリスに近づくと滝の流れが変化したり、花が散っていったりします。窓の外で息づく鮮やかな木々と、時間が止まったような廃墟に現れた時空の塊は息をのんでしまうほど美しい光景でした。 隣の廃墟になった湯屋に展示されている作品が『グラフィティネイチャー』。絶滅のおそれのあるレッドリストの生き物たちが動きまわります。生き物を食べたり、食べられたり、生態系が描かれています。
日が暮れると庭園は変貌します。「チームラボ かみさまがすまう森|earth music&ecology」の開幕です。夜のみ見られる17作品を鑑賞できます。
灯りに浮き上がる御船山に、闇の中に佇む木々や岩。自然と人との営みが長く続いてきた庭そのものの形をそのまま使い、いたるところに現れるチームラボの作品群。
『かみさまの御前なる岩に憑依する滝』(5P写真)は、何といっても圧倒的な存在感でした。かなりの高さから流れ落ちる水が、巨石の上で拡散するプロジェクションマッピングです。映像とわかっていても、滝の迫力が伝わってきます。
また、御船山楽園の池で行われる『小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング』も見逃せません。静かな水面には鯉たちが泳ぎ小舟がやってくると周りに集まり、動きだすと避けていきます。そして鯉たちの群れの動きの軌跡が池全体に美しいラインとなってクライマックスに…!池のほとりでゆっくり見届けたい作品でした。
さて、庭を巡りながら色々な作品を楽しみつつ、一服してほしい場所があります。そこは夜のみ園内にオープンする「EN TEA HOUSE|幻花亭」です。お茶は入場料と別料金ですが、『小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々』を体験できます。お茶をいただくと、器の中に花が咲き、散っていく様子を楽しめます。幻想的な世界と上質なお茶をぜひ味わってください。
「チームラボ かみさまがすまう森」は、世界最大のアート・デザイン・建築のデジタルメディア「デザインブーム」で2017年のアートインスタレーション世界1位に選ばれました。
芸術の秋、雄大な自然の中でアートの世界に触れてみませんか。