HOME > いいものみっけ(2019年4月号)
昔から交通の要衝であった関門海峡の両岸、下関(山口県下関市)と門司(福岡県北九州市門司区)には、明治から大正にわたり近代国家として歩んだ歴史を物語るレトロな建造物が今も多く残っています。「関門ノスタルジック海峡~時の停車場、近代化の記憶~」として平成29年に日本遺産にも認定されました。
かつて貿易港として栄えた門司港の周辺は、貿易会社や日本銀行の支店などが建ち並び、映画館や高級料亭などもある繁華街でした。現在は「門司港レトロ」という形で整備され観光スポットとして賑わっています。
その主軸を担っている1つが国の重要文化財「門司港駅」です。
今回門司を訪れた甲斐は、大学時代を北九州市で過ごし、門司港レトロは馴染みの場所でしたが、じつは門司港駅の外観を見たのは初めて。というのも、駅舎を覆っていた仮設の囲いを日常の姿のように思っていたからです。
それほど長い歳月をかけて修理されていた理由とは?
門司港駅を訪ね、九州旅客鉄道株式会社の稲盛さんに話を伺い、駅舎を案内していただきました。
姿を現した外観は、見事なまでのネオ・ルネサンス様式※。正面入り口をはさんで両側にジャイアントオーダー(大きな柱)があるシンメトリーなデザイン。これは修理前の姿ではなく、大正時代の駅舎に戻したとのこと。老朽化した建物を保全するという目的に加え、重要文化財として創建当時の姿を蘇らせたのだそうです。
みどりの窓口とコンコースは昨年11月から使用開始されており、お客様の往来も頻繁でした。2階は3月10日より公開ですが、「貴賓室」や「みかど食堂」など、さまざまな資料を基に再現された室内は重厚感たっぷり。解体して痕跡を確かめながら大正時代の姿を復原していったということで、工事に時間がかかったのも納得です。
門司港駅を訪れた際には、ぜひお見逃しなく。
※ネオ・ルネサンス様式とは19世紀前半にヨーロッパから広がった建築様式です。
15~17世紀に流行したルネサンス建築を見直し、左右対称、水平線の強調などルネサンス様式の特徴を基本に、
中世の荘厳さに各地の新しい建築方式をミックスしたものです。
門司港駅を出て周辺を歩くと、赤レンガや石造りなどレトロな建造物があちこちに。
「旧門司税関」は明治時代、「旧門司三井倶楽部」と「旧大阪商船」は門司港駅と同じく大正時代の建物です。
旧門司三井倶楽部は、大正10年に建築された三井物産の接客・宿泊施設だった建物。ハーフティンバー様式※の木造建築で国の重要文化財に指定されています。大正11年にアインシュタイン夫妻が宿泊したとのことで、その寝室と居間が復原保存されていました。
はね橋(ブルーウィングもじ)を渡って、ひときわ目立つタワーマンションへ。31階まで高速のエレベータで上ると「門司港レトロ展望室」があります。雄大な関門海峡と往来する船舶、関門橋や門司港レトロ地区の絶景を楽しむことができました。
※ハーフティンバー様式とは北ヨーロッパの木造建築の技法です。
柱や梁など骨組み構造部材を外部に出し、その間を漆喰やレンガ等で埋めて外壁が造られ、骨組みが外観デザインのアクセントになっています。
門司は九州の玄関口、九州における鉄道の起点でもありました。そこで次に訪れたのは「九州鉄道記念館」です。
赤レンガ造りの本館は明治24年に旧九州鉄道会社の本社として建てられたもので国の登録有形文化財となっています。館内では明治時代の客車や運転シミュレーターなどを体験できるほか、貴重な鉄道関連資料を展示。
屋外には、となりの門司港駅の鹿児島本線と並ぶホームのような雰囲気で、懐かしい蒸気機関車や寝台特急などの車両が展示されています。またミニ鉄道公園もあり、鉄道ファンはもちろん子供から大人まで夢中になる見どころ満載の施設でした。
さいごに、門司港を訪れたらぜひ足を延ばしてほしい、とっておきの場所をご紹介しましょう。
トロッコ列車レトロライン「潮風号」、関門海峡めかり駅で下車し「関門トンネル人道」を歩いてみてください。
九州と本州を結ぶ海底トンネルで、車道の真下に人道が造られているのです。
海の底を歩いて渡れるのはもちろん、その途中に福岡県と山口県の県境表示があり人気の写真スポットになっています。
時間にゆとりがあれば下関まで渡り、下関(唐戸ターミナル)から関門連絡船で門司港まで戻るというコースもおすすめですよ。
創建当時の姿に生まれ変わった門司港駅をはじめ、関門で大正ロマンを感じるノスタルジックな旅を楽しんでみませんか。
大正3年開業のネオ・ルネサンス様式の木造建築の駅。
大正時代に営業していた洋食食堂「みかど食堂」を、JR九州「或る列車」スイーツコースを手掛ける成澤シェフ監修のレストランとしてオープン。
門司港と国際航路で結ばれていた大連市。明治35年に大連で建築された東清鉄道汽船事務所を複製したもの。1階は中華レストラン。
10時、11時、13時、14時、15時、16時に開閉した姿を見ることができます。
大正10年に三井物産の社交倶楽部として建築。2階はここに宿泊したアインシュタイン夫妻のメモリアルルームと林芙美子の記念室、1階にレストランがあります。
入館料(2階)/大人150円・小中学生70円
開館時間/9:00~17:00
休館日/無休 TEL:093-321-4151
昭和4年建築の門司税関1号上屋。映画に関する資料を展示する松永文庫もあります。
大正6年建築の大阪商船門司支店。
1階には「わたせせいぞうギャラリー」があります。
入館料/わたせせいぞうギャラリー
大人150円・小中学生70円
開館時間/9:00~17:00
休館日/ギャラリーのみ展示入れ替え時あり
TEL:093-321-4151
門司税関が発足し、明治45年に建築。昭和初期まで税関庁舎として使用。休憩室や税関PRコーナーがあります。
入館料/無料
開館時間/9:00~17:00
休館日/無休 TEL:093-321-4151
黒川紀章氏が設計した高層マンションの31階に、門司港エリアを一望できる展望室とカフェがあります。
入館料/大人300円・小中学生150円
開館時間/10:00~22:00(入館21:30まで)
カフェのみ平日10:00~17:00(OS16:30まで)
土日祝10:00~19:00(OS18:30まで)
休館日/年4回あり TEL:093-321-4151
関門海峡にまつわる歴史を体感できる施設。
飲食店やお土産店などがずらりと並ぶハーバーデッキ。
九州鉄道記念館駅~関門海峡めかり駅を結ぶトロッコ列車。今年は3月9日~11月末の土日祝と春・夏休み・GWの毎日運行。
出光興産創業者の出光佐三が収集したコレクションを中心に展示する美術館。
懐かしい車両の展示や、運転シミュレーター体験などがあり、鉄道の歴史を楽しみながら学べます。
入館料/大人300円・中学生以下150円
開館時間/9:00~17:00(入館16:30まで)
休館日/第2水曜日(祝日の場合は翌日)
(7月は第2水・木曜、8月は休みなし)
TEL:093-322-1006
大正13年に逓信省の電話課庁舎として建築。門司における最初のモダン建築。
昭和6年建築の木造3階建ての料亭。
昭和33年に開通した約780mの海底人道トンネル。歩いて関門海峡を渡れます。途中の県境はインスタ映えスポット。
通行料/歩行者無料、自転車・原付20円(通行可能時間6:00~22:00)
門司港は貿易港だったので洋食店が多く、ハイカラなメニューが生まれました。何といっても焼きカレー。
諸説ありますが、昭和30年代に喫茶店で余ったカレーをグラタン風に焼いたところ、おいしくてメニューにしたのが始まりとか。
■焼きカレー専門店 伽哩(カリイ)本舗 門司港レトロ店
北九州市門司区港町9-2 阿波屋ビル2F
TEL:093-331-8839
営業時間/平 日11:00~14:30、17:00~20:00
土日祝10:30~20:00
定休日/不定休
バナナを使ったスイーツやお土産菓子がいっぱい。
なぜなら、門司港は「バナナの叩き売り」発祥の地。
門司港レトロ地区は、西海岸にある新海運ビルを
はじめ、雑貨屋さんやカフェが多いことでも有名。
オーナーさんのセレクトと好みが合えば
素敵な雑貨と出会えますよ。
門司港レトロ観光情報のお問い合わせ
門司港レトロ総合インフォメーション
TEL:093-321-4151(9:00〜18:00)
http://www.mojiko.info/